花組メサイアの全体的な感想。いつだってジェンヌさんの作る世界は最高だけど、少しもやもやしたり。

ひかりさす原っぱ

おはようございます。salt(@salt3123)です。

先日花組公演「MESSIAH(メサイア) −異聞・天草四郎−」「BEAUTIFUL GARDEN −百花繚乱−」を観劇してきました。

メサイアの感想をざっくり書いています。

ジェンヌさんは最高でしたが、お話的にはちょっともやっとしたところもあったりです。

ネタバレ全開ですので、いやだ! という方は戻っていただいた方がいいです。

(2回目観劇後、2018/9/17に少し追記・修正しています)

ショー・ビューティフルガーデンの感想はこちらからどうぞ。

関連:花組BEAUTIFUL GARDEN の感想。適材適所・美しくて楽しくて、幸せな気持ちになれるショー!

宝塚の民衆の歌の迫力

物語終盤の、明日海りおさん演じる天草四郎の演説からの民衆大爆発ソング。この場面が一番、心を揺さぶられました。

人数の多さって宝塚の良いところの一つですよね。歌の圧がすごいんです。迫力でした!

 

四郎はこちらが思っていることを全部言ってくれました。

祈っても願っても、助けてくれない神様にすがることへの疑問。不敬な発言をしても罰を与えるでもない。

そんな何もしない神様より、自分の命を救ってくれたあなたたちのほうがよっぽど力がある。神様は天にいるんじゃなく、あなたたちひとりひとりの心の中に宿っているんだ。

運命だと、神様が何とかしてくれると、ある意味あきらめていた人々の心に火をつけたんですよね。

ここのみりおさん(明日海さん)のお芝居は本当に心揺さぶられました。

 

ちょっと残念だったのは、その四郎へのアンサーの第一声が「メサイア……」だったこと。

そしてそこからの歌の歌詞がメサイアを讃える「あなたがいれば大丈夫だ!」だったこと。

物語上仕方がないんですけどね。

いやいやそれじゃ、信仰の対象を神様から四郎という「救世主(メサイア)」に移しちゃってるだけじゃん……! 四郎の言ってること伝わってないじゃん! と思ってしまったのでした。

 

ひねくれた見方だったかなー? 四郎をリーダーにおいて、自分たちの手で自分たちのハライソ(天国)をつかみ取ろうと戦う流れですものね。

単に救世主、という言葉や概念があまり好きではないだけかもです。

もう一度見たらまた感想も変わるかも。

お芝居の大階段の場面はいつもわくわく

クライマックスは大階段でのバトルですよ!

殺陣が多くて見ごたえたっぷりです。

殺陣 × 群舞 with カッコいい音楽……最高です!

なんとなく瑠璃色の刻(2017年)のロベスピエールのフランス革命の場面を思い出しましたね。

原田先生と音楽の玉麻尚一先生という組み合わせも一緒ですし。

瑠璃色では刀ではなく、銃を武器にしての群舞でしたけどね。カッコいいのは同じ。

柚香光さん演じるリノが不憫

だ、誰かリノの話聞こうよぅ……。

終盤で幕府から話し合いを求められ、俺が行くという四郎を制してリノが向かうのです。

そこで皆を救う交換条件として出されたのが、大将の天草四郎の首。まぁそれはそうですよね。

この時代としてはこんな大ごとになった以上、何の落とし前もつけず収束させるなんてありえないことです。

星逢一夜(2015年)でも、主人公の天野晴興はそのために大事な人を斬っていますから。(時代も徳川幕府でしたね。星逢のほうは江戸後期ですが)

あと私は直虎(去年のNHK大河ドラマ)を思い出しました。多くの人の命を守るために、たった一人の大切な人の命を引き換えにする。

 

簡単に決断できないリノは、それでも四郎に生きてほしかったんでしょうね。「逃げろ」っていうんですよ。四郎は何言ってるんだと取り合わない。そんな四郎に業を煮やしたのか、四郎を否定するようなことを言って、切りかかるんです。

四郎を逃がすためにわざと心にもないことを言って、出ていかせようとしたのでしょう。(たぶん)

それをねー、人々は意外と躊躇なく「裏切ったな!」と牢に入れちゃうんです。

 

ただでさえ人々のために、人々の心の支えのために神の絵を描いてきたリノですよ。

なんっっっで誰一人彼の話を聞こうとしないのかなー? 仲間を大切にしそうな集団なのに、ずいぶん冷たい。ひどい。

裏切ったと決めつけて問答無用で牢屋いきって! 幕府から戻ってきてのあの言動なんだから、なんかあったってわかるでしょうに。

せめて、四郎と流雨さんは信じてあげてほしかったです。流雨さんなんて、リノとはそれなりの時間一緒にいただろうに。

四郎より前から、人々のために、そして流雨のために力を尽くしてきただろうに、誰にも顧みられないリノが不憫すぎて悲しかったです。

牢屋に四郎が来てくれた時は、(あ……! リノのこと思ってきてくれたんだ! よかったね、リノ!)と一瞬喜んだものの、「幕府の鈴木という人から矢文がきたんだ」って! それか! それできたのか! 自分で気がついたんじゃないの~というがっかり感。

何事もなく、いきなり四郎のこと襲うわけないし、「ここから離れろ!」とまで言ってくれてるんだから、何か事情があるんだろうって思うでしょう。せめて四郎には自分で気がついてほしかったです。

 

全てにおいて綺城ひか理さん演じる鈴木のGood Job感……! 鈴木がいなかったらリノの思いは誰にも届かなかったの?

ところで今Wikiを見てきたのですが、史実はリノ(山田右衛門作)妻子持ちなんですね。その妻子は一揆勢に、すなわち乱を起こした村人勢に殺されているという……。その前に山田右衛門作が裏切っているという前提のようですが。

…………ま、まぁ宝塚の物語とwikipediaと、別物ですし! 本当のことなんてわかりませんから。あんまり深く考えすぎずに二回目の観劇にのぞみたいと思いますっ。

参考:山田右衛門作|ウィキペディア

お話的にはもやもやしてしまった件

ジェンヌさんは最高

花組の皆様は相変わらず最高でした。

キャスト別にまた書きたいと思いますが、みりおさんはさらに歌が上手になられた印象でしたし、仙名さんのソロはもう本当に清らかすぎて、何もかも浄化された気分でした。髪型とかアシンメトリーのスカートとかも素敵だったなー。

ちなつ(鳳月杏)さんはお芝居も歌もすべて最高でしたし、異様にカッコいいし。舞空瞳ちゃんはめちゃめちゃかわいかったです。

マイティー(水美舞斗)さんと綺城さんのお芝居最高でしたし!!

もやもやした点

ただですね、お話がいまいちもやもやしてしまいました。

小さなことが気になってしまったりして。

上に長々とかいたリノのくだりや、「神は皆の中に!」からの速攻メサイア! とか。

たそ(天真みちる)さん演じる田中宗甫と四郎のぶつかる場面で堂々とフルネームで名前名乗るくだり。いやいや苗字まで名乗ったら、お父様たちまで巻き込んじゃうよ! って思っちゃったり。

唐突に流雨のこと好きになっちゃったり。宝塚あるあるですが。

私はこの場面、四郎がいやに深刻な顔してるから、

(ああ、信仰のことや弾圧されるかもしれない人々の状況を重く受け止めてるんだな…)と思いつつ銀橋を渡る四郎を見ていたら「彼女が気になるソング」だったので、そっちかーい!! と脱力しちゃったり。

 

2018/9/17以下追記。

ここの歌はもしかして、リノが流雨さんをモデルにして書いているあのマリア様の絵のニュアンスが強かったりするのかなー? 

流雨さんが恋愛的に気になる、というよりは絵のマリア様の美しさ、清らかさとそれに似た面影を持つ流雨さんの湛えた雰囲気。

恋愛的感情より、その神秘性に惹かれたのかなという気もしました。

追記終わり。

 

ラストもうーんとなってしまいました。

四郎も流雨も、みんなの中で笑っていてほしかったからかな。

あがめられる対象ではなくて、同じ大地に(ハライソですけど)みなと同じ目線で笑い合っていてほしかったんです。メサイアだから仕方がないかもしれませんけど。

(でも「誰か」に救ってもらう、だと変わってないじゃないと思ってしまった)

もやもやの要因は自分の中にある

もやもやしちゃった理由は3つあると自己分析。

どれも「メサイア」というお話にちゃんと向き合えなかったことが原因かなと思います。

 

1つめは単純に期待しすぎた。

私が最近観劇した原田先生の作品は、瑠璃色の刻(2017年)、ベルリンわが愛(2017年)。

特にうーんともならなかったのです。そしてあのポスター!! お話に対しても普通に期待しちゃったんですね。

 

2つめは場面が切り替わるので、おっとここはどこでいつだ? となったり、知らない言葉や名前が瞬時に理解できず、お話に集中しきれていなかったのかもしれません。

「大納言様」とか急に出てきて(え、誰……ああ! 家康のことかな??)となったりしていました。(た、たぶんそうだと思うのですが…)

 

2018/9/17以下追記。

「大納言」じゃなくて、「大権現様」で家康のことでした。

2回目観劇してたら、ちゃんと「家康様」って先に言っていましたね。

 

3つめ。

良くないことかもですけど、観劇中にちょこちょこ(あ、この場面あの作品のアレみたいだなー)となる箇所がいくつかあったのです。特によぎったのは以下の作品。

・金色の砂漠(2016年)

・桜華に舞え(2016年)

・さっきも書きましたが、大河の直虎

この3作品、全部心をえぐってきた作品だったので、メサイアが刺さりきらなかったんですよね。

2回目の観劇(2018/9/17追記)

やっぱり、1回目よりすっと物語の世界に入り込めました。

物語中に名前だけも含めて出てくる将軍様は、家康(初代)ー家光(3代)ー家綱(4代)

その流れもきちんと理解できましたし。(いえ、ちゃんとお芝居中でも名乗ってるし説明されてもいたのですが、1回目はうまくキャッチできていなかったようです…)

 

あと柚香光(ゆずかれい)さんの歌とお芝居が、最初に見たときよりずっと良くなっていた気がします。

1回目は初日すぐだったせいか、最初の銀橋ソロの出だしからハラハラしてしまったんです。でも2回目はそれがなく。はい、純粋に楽しめました。

カレーさんのお芝居、ちょっと泣きそうになりましたもん。

カレーさんにはボロボロに傷つく役をやってもらいたいなぁ。「メサイア!」と民衆が盛り上がる影での孤独感が最高でした。リノには申し訳ないですが、その姿にときめいてしまいました。

もしくは素朴な役がいいです。

おわりに:次はもっとフラットに

だいたいの流れはわかったし、人物相関もざっくり把握できました。

もう1枚チケットがあるので、次はもっと素直に物語の世界に入りたいと思います。

キリシタンの弾圧がどう描かれるかわからなくて、観劇前からこころをガードしていた部分もあると思うんですよね。

史実的にも結末はわかっていますし。残酷描写が苦手で、スカピンのギロチンも目をつぶってしまうくらいですから。

大階段の十字架も、しんどかったです……。あれは全部ひとなんだと思うときつかった。

宝塚はどんなラストでも最後にショーがあるからいいですよね。こころが救われます。

 

ショー・ビューティフルガーデンの感想はこちらからどうぞ。

関連:花組BEAUTIFUL GARDEN の感想。適材適所・美しくて楽しくて、幸せな気持ちになれるショー!

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2 Comments

りんご

はじめまして。わたしも先日観劇してからもやもやしていたので、読んで共感しました。組子のレベルが高いだけに不憫にすら感じました。わたしもあと一回観に行きます。またsaltさんの感想を楽しみにしています。

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salt

りんごさん

はじめまして。メサイア感想共感してくださって、ありがとうございます。
絶賛感想ばかりだったので、自分がひねくれてるのかな~とちょっと悩んでいたので、うれしいです。笑

昨日2回目行ってきましたが、やはり全体の流れや名前、言葉が入っているからかより楽しめましたよ!

この感想記事にちょこっと追記しつつ、キャスト別にも感想書きたいと思っています。
またぜひ遊びに来てくださいね。

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